MC column

思索という静かな冒険

update:2008.5.1

日本で発達した数学

200年以上も外国との交流がなかった江戸時代。鎖国の間、日本は海外の影響を受けることなく、独自の文化を生み出しました。いまも親しまれている歌舞伎や狂言などの演劇、相撲や柔道といったスポーツ、華道や茶道の趣味も日本のなかで純粋に発達してきたものです。そんな「純和風」の文化のひとつに「和算」があります。
和算は日本独特の数学です。その内容は非常に高度で、微積分はもちろん当時の計算で円周率を小数点以下11位まで確定していたというほど、正確なものでした。それほど発達した学問であったにもかかわらず、明治維新以降海外からの数学「洋算」を取り入れると、急速に廃れてしまいました。

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これは算額を復元したもの。円の内側に接する3つの六角形と、それに接する等円があります。この等円の径を求めなさい、というもの。中央には答えがあります。

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こちらが答えを数式化したもの。比べてみて、同じことを文字で解いているのがわかりますか?

かつて算数は趣味だった

和算では、どんなに難しい数式も算盤(そろばん)と算木(さんぎ)という板を使って解くことができました。また、和算を実用だけでなく趣味として楽しんでいた人が多かったようです。「読み書き算盤」といわれるように、算盤による計算はだれにでもできました。そこで難しい問題を考えては、それを解く方法を見つけるという「楽しみ」が広まったのです。ちょうどいまのパズルのような感覚で、庶民から殿様まで和算を楽しんでいたのです。
和算では、複雑な数式が「言葉」で書かれ、また「言葉」を使って解かれています。方程式の未知数は「甲」「乙」「丙」で表されます。代数などを解くために「傍書法」という記号も使われましたが、これは加減乗除を棒線に置き換えたものです。

数式嫌いが直る和算の魅力

和算が盛んに行われていた時代、難しい問題を考えて、解答をみつけると神社や寺に奉納する習慣がありました。算術をひとつの「芸能」と考えていたのでしょう。絵馬のような板の表面に問題が書かれ、裏には解が書かれて奉納されました。これを「算額」と呼びます。この額はいまも日本全国の神社仏閣に約820面が現存しています。
江戸時代には算額はポピュラーなもので、たとえば目黒不動尊に奉納された算額を集めた問題集が発行され、ベストセラーになったこともあります。
文字で考え、算盤で答えを出す数学。数式アレルギーの人も、こんな数学なら理解が早いかもしれません。いまでも大きな書店なら、数学書のコーナーに和算の入門書が何冊か置かれています。一冊手にとって和算の基礎を覚えたら、こんどは算額を訪ねてみてはいかがでしょう。まったく違うアプローチで、数学が好きになれるかもしれません。

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岡山県真庭市の「化生寺」にある算額。意外と身近なところに算額は奉納されているのです。

関連リンク

http://www.wasan.jp/

和算と算額のホームページ。日本中で発見された算額がリストアップされています。近くの神社にあるかもしれません。

http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~kanie/students/tomommy/index2.html

三重大学のゼミによる和算の簡単な問題。Javaを使って解答をわかりやすく説明しています。和算を知る入り口として。

http://www.nikkei-science.com/page/magazine/9807/sangaku-Q.html

「日経サイエンス」誌1998年7月号に掲載された和算の問題。こちらでは数式なども使って解を説明しています。

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